はじめに
近年、中国やロシアのスパイ活動が世界で問題になっています。ところが日本には、いわゆる「スパイ防止法」が存在しません。主要国の中ではかなり珍しい状況です。本記事では、日本の現状と諸外国との比較を整理してみます。
日本の現状
- スパイ防止法は存在しない
日本では1985年に「スパイ防止法案」が国会提出されましたが、
👉「報道や市民活動を制限するのでは?」という懸念から廃案となりました。 - 部分的な対応にとどまる
代わりにいくつかの法律が断片的に対応しています。- 国家公務員法・自衛隊法:公務員の守秘義務
- 防衛秘密保護規定
- 特定秘密保護法(2013年施行):外交・防衛など特定分野の秘密漏洩を処罰
- 外為法:軍事転用可能な技術の流出を規制
これらは「国家秘密の漏洩」を対象にしているだけで、スパイ活動そのもの(潜入・勧誘・情報収集)を網羅的に取り締まる仕組みではありません。
諸外国の対応
アメリカ
- 1917年「エスピオナージ法」でスパイ活動を厳しく処罰。
- FBIやCIAがスパイ摘発を担当。
イギリス
- 「Official Secrets Act」で国家秘密の漏洩を処罰。
- MI5が国内諜報活動を監視。
ドイツ
- 刑法に「スパイ罪」を明記。
- 連邦憲法擁護庁が対応。
フランス
- 刑法で諜報・国家機密漏洩を処罰。
- DGSI(治安総局)が監視。
中国・ロシア
- スパイ防止法や国家安全法が整備され、外国人も処罰対象。
- 国家安全機関が強い権限を持つ。
日本の特異性
- 主要先進国の中で、包括的なスパイ防止法が存在しないのは日本くらい。
- そのため「日本はスパイ天国」と国際的に揶揄されることもあります。
- 一方で「法律を作ると表現の自由や取材活動が萎縮する」という懸念も強く、議論は進みにくいのが現状です。
おわりに
日本には「包括的なスパイ防止法」がなく、現状は複数の法律を組み合わせて“部分的に”対応しているに過ぎません。
世界的に見てもこれは珍しく、日本が抱える安全保障上の大きな課題といえるでしょう。
今後は「安全保障」と「自由・人権」のバランスをどう取るかが焦点になっていくはずです。
コメント