はじめに
経済学でよく耳にする「R>g」という不等式。これはフランスの経済学者トマ・ピケティが『21世紀の資本』で広めた考え方で、資本収益率(R)が経済成長率(g)を上回ると、資産を持つ人と持たない人の格差が拡大することを示しています。
この記事では、日本の歴史の中で「R>g」がどのように現れたかを振り返り、今後の日本でこの構造が続く場合にどう備えるべきかを整理します。
R>gとは何か?
- R(Return)=資本収益率
株式・不動産・債券などから得られる利回り(平均して年3〜6%)。 - g(Growth)=経済成長率
GDP成長率。先進国では2%前後が一般的。 
R>g =「資産が増えるスピード > 経済全体の成長スピード」
この状態では、資産を持つ人が労働者よりも早く豊かになり、格差が自然に拡大していきます。
日本の歴史に見るR>g
江戸時代(17〜19世紀)
- 経済成長は停滞(g ≒ 0〜1%)。
 - 地主や豪商は年貢・貸付金で数%以上の収益を得ていた。
 - → 資産を持たない農民は豊かになれず、地主が力を持つ社会。
 
明治〜大正期(1868〜1920年代)
- 産業革命でg ≒ 3%。
 - 財閥(三井・三菱など)は鉄道・鉱山・銀行で10%超の利回り。
 - → 財閥が富を集中させ、労働者との格差が拡大。
 
高度経済成長期(1950〜70年代)
- g ≒ 7〜10%、奇跡の成長。
 - R ≒ 5〜7%。
 - → g > Rとなり、労働者の賃金が大幅に上がり「一億総中流」へ。格差縮小の稀有な時代。
 
バブル期(1980年代後半)
- g ≒ 4%。
 - 株・不動産は10%以上のリターン。
 - → R > gが顕著となり、資産を持つ人が急速に富を拡大。
 
失われた30年(1990〜2020年代)
- g ≒ 0〜1%。
 - 株式や不動産は3〜5%の利回り。
 - → 再びR > g。給与が伸びない中、資産格差が拡大。
 
今後の日本でR>gが続く場合の課題
- 人口減少で経済成長率(g)は低迷する見込み。
 - 一方、株式・不動産など資本収益率(R)は一定程度確保される可能性が高い。
 - → このままでは「働いても豊かになりにくく、資産を持つ人が有利」という構造が続く。
 
個人の対策
- 資産運用に参加する
- NISA・iDeCoを活用してインデックス投資や分散投資。
 - 労働収入を投資に変え、「資本の側」に立つ。
 
 - 収入源の多様化
- 副業やスキルアップで追加収入を得て、それを投資へ回す。
 
 - 長期的な視点を持つ
- 短期の景気循環に惑わされず、複利効果を最大化する。
 
 
社会としての対策
- 税制と再分配の強化
- 金融所得課税や相続税の見直しで富の固定化を防ぐ。
 
 - 投資の民主化
- NISA恒久化や金融教育で、誰もが資本収益を得られる仕組みを整える。
 
 - 経済成長の底上げ
- 技術革新・少子化対策・移民政策などでgを高め、労働収入の伸びを確保する。
 
 
まとめ
- 日本の歴史でも「R>g」は繰り返し現れており、格差拡大を生み出してきました。
 - 高度経済成長期だけが例外的に「g > R」となり、格差が縮小しました。
 - 今後も低成長が続けば「R>g」は避けにくく、個人レベルでは資産運用への参加が最大の防御策となります。
 - 同時に、社会全体で税制・教育・成長戦略を見直すことが不可欠です。
 
💡 一言でまとめると
日本の歴史は「R>g」との戦いの連続。これからの時代は、労働だけでなく資産運用で「資本の側」に立つことが生き残りの鍵になる。
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