新NISAについて調べていると、「NISAに〇〇万円入れました」「今年もNISA枠を使い切りました」といった話を目にすることがあります。さらに、金融庁が公表しているNISAの利用状況を見ると、とても大きな数字が出てきます。
NISAの累計買付額は約71兆円。
これだけを見ると、
「みんなそんなに投資しているの?」
「自分の積立額は少なすぎるのでは?」
と感じるかもしれません。しかし、結論からいうと、71兆円を自分の積立額と比較する必要はありません。
この記事では、YouTube動画で紹介した内容をベースに、「大きな数字をどう読めばいいのか」をもう少し詳しく整理します。
NISAの累計買付額は約71兆円
金融庁が公表しているNISAの利用状況調査では、2025年12月末時点のNISAについて調査されています。
ここで重要なのが、
「累計買付額」
という言葉です。
71兆円という数字を見て、
「NISA口座に現在71兆円の資産がある」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、買付額と現在の評価額は別物です。
例えば、NISAで100万円の投資信託を購入したとします。
その後値上がりして120万円になっても、購入した金額は100万円です。
反対に80万円まで値下がりしても、購入した金額自体は100万円です。
つまり、
買付額=現在の資産価値
ではありません。
71兆円という数字を見るときも、まず「何を集計した数字なのか」を確認する必要があります。
71兆円÷2,826万口座=約251万円?
ここでもう一つ気になる数字があります。
NISA口座数を約2,826万口座として単純計算すると、
約71兆円 ÷ 約2,826万口座 ≒ 約251万円
となります。
すると、
「NISAをやっている人は平均251万円くらい投資しているの?」
と思ってしまいます。
しかし、これも注意が必要です。
71兆円は累計買付額である一方、約2,826万口座はある時点での口座数です。
性質の異なる2つの数字を単純に割ったものなので、251万円を典型的なNISA利用者の投資額と考えることはできません。
まして、
「みんな251万円投資している」
「自分も251万円まで投資しないといけない」
という意味ではありません。
「平均投資額はいくら?」は意外と難しい
では、実際のNISA利用者は年間いくら投資しているのでしょうか。
ここが意外と難しいところです。
金融庁のNISA利用状況調査では、口座数や買付額などが公表されています。
しかし、私が確認した金融庁資料では、
「典型的なNISA利用者の年間積立額は○万円」
という形では公表されていません。
そのため、ネット上で見かける「平均○万円」という数字を見る場合は、
- 何年のデータなのか
- 全NISA口座が対象なのか
- 実際に買付けをした口座だけなのか
- つみたて投資枠だけなのか
- 成長投資枠も含むのか
- 平均値なのか中央値なのか
を確認する必要があります。
計算方法や対象者が変われば、「平均投資額」も変わってしまうからです。
平均値だけを見ると「普通」を勘違いすることもある
資産形成では、平均値にも注意が必要です。
例えば10人いるとします。
9人がそれぞれ100万円を持っていて、1人だけ9,100万円を持っていたとします。
合計は1億円です。
10人で割ると、
平均資産額は1,000万円。
ところが実際には、10人中9人が100万円しか持っていません。
この例では、中央値は100万円です。
平均値だけを見ると、
「みんな1,000万円くらい持っている」
と勘違いしてしまいます。
投資額についても同じです。
一部の投資額が大きい人が平均値を押し上げる可能性があります。
だからこそ、
平均値だけでなく中央値や分布も見る
ことが重要になります。
NISAが広がっていること自体は間違いない
一方で、71兆円という数字に意味がないわけではありません。
むしろ、制度全体を見るうえでは重要な数字です。
政府は2022年の「資産所得倍増プラン」で、今後5年間でNISA総口座数を約1,700万口座から3,400万口座へ、NISAの買付額を約28兆円から56兆円へ倍増させる目標を掲げました。
つまり71兆円を見るときは、
「普通の人はいくら投資しているのか」
ではなく、
「NISAという制度を通じた投資がどこまで広がっているのか」
を見る数字として捉えた方が分かりやすいでしょう。
年間360万円は「目標額」ではない
2024年からのNISAでは、
| 投資枠 | 年間投資上限 |
|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 |
| 成長投資枠 | 240万円 |
| 合計 | 最大360万円 |
となっています。
ここで重要なのは、
360万円は「上限」であって「ノルマ」ではない
ということです。
年間360万円の枠があるからといって、360万円投資しなければ損をするわけではありません。
月1万円なら年間12万円。
月3万円なら年間36万円。
月10万円なら年間120万円。
家計によって適切な金額は違います。
金融庁も現在のNISAについて、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、併用で年間最大360万円と説明しています。
同じ月10万円でも負担はまったく違う
例えば、2人とも毎月10万円をNISAで積み立てているとします。
Aさんの手取りが30万円なら、積立額は手取りの約33%。
Bさんの手取りが60万円なら、約17%です。
同じ「月10万円」でも、家計への負担はまったく違います。
さらに、
- 家賃
- 住宅ローン
- 子どもの有無
- 教育費
- 車
- 今後の大きな支出
- 生活防衛資金
などによっても投資できる金額は変わります。
だからSNSで、
「毎月10万円投資しています」
という投稿を見ても、その10万円だけを自分と比較してもあまり意味がありません。
投資額を決めるなら「他人」より「自分の家計」
では、自分はいくらNISAで投資すればいいのでしょうか。
私は、次の順番で考えるのが分かりやすいと思っています。
① 毎月の生活費
まず生活するためのお金です。
② もしものためのお金
病気、失業、突然の出費などに備える生活防衛資金です。
③ 近いうちに使う予定のお金
住宅、車、教育、旅行など、近い将来に使う予定があるお金です。
④ 長期間使う予定のない余裕資金
ここまで整理したうえで、長期間使う予定のないお金から投資額を考えます。
生活費を削ったり、数年後に使う予定のお金まで投資したりして、無理にNISA枠を埋める必要はありません。
FAQ
Q. NISA利用者は平均251万円投資しているの?
そういう意味ではありません。
約71兆円を約2,826万口座で単純に割ると約251万円になりますが、累計買付額とある時点の口座数から算出した数字です。
典型的なNISA利用者の投資額を示す数字として扱うのは適切ではありません。
Q. 年間360万円を使い切った方が得?
360万円はNISAで年間に投資できる最大額です。
投資すべき金額を示したものではありません。
自分の収入、支出、貯蓄、今後必要になるお金などから投資額を決めることが重要です。
Q. NISAの「平均積立額」はいくら?
金融庁の利用状況調査では、口座数や買付額などが公表されています。
一方、今回確認した一次資料では、「一般的なNISA利用者の平均年間積立額」という形の数字は確認できませんでした。
平均○万円という情報を見る場合は、その数字の出典と計算方法を確認した方がよいでしょう。
Q. 平均と中央値ならどちらを見るべき?
どちらにも意味があります。
ただし、投資額や金融資産のように一部の大きな数字の影響を受けやすいデータでは、平均値だけを見ると実態を誤解する可能性があります。
中央値や金額ごとの分布まで確認すると、より実態を把握しやすくなります。
まとめ|NISAは競争ではない
NISAの累計買付額約71兆円。
約71兆円÷約2,826万口座で約251万円。
年間投資枠最大360万円。
どれも非常に大きな数字です。
しかし、これらは、
「あなたはいくら投資すべきか」
を決めてくれる数字ではありません。
71兆円から分かるのは、NISAを通じた投資が大きな規模に広がっているということ。
年間360万円から分かるのは、制度上そこまで投資できるということ。
そして、自分が実際にいくら投資するかは、自分の家計から考えるものです。
NISAは競争ではありません。
みんながいくら投資しているかより、
自分がいくらなら無理なく続けられるか。
大きな数字を見て焦ったときこそ、その数字が「何を表しているのか」を一度確認してみましょう。
YouTubeでも解説しています
この記事の内容は、YouTube「まねたぬ|お金の不安整理」でも初心者向けに解説しています。
新NISA、みんなそんなに投資してるの?「71兆円」の正しい見方
参考資料
- 金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査」
2025年12月末時点の調査:2026年7月3日公表 - 内閣官房「資産所得倍増プラン」
NISA総口座数を約1,700万口座から3,400万口座へ、買付額を約28兆円から56兆円へ倍増する目標 - 金融庁「NISAを知る」
2024年以降のNISA制度、年間投資枠等
※制度・統計は記事執筆時点(2026年8月16日)で確認した情報です。

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